れんげ荘(群ようこ著)の印象的なシーンまとめたよ(`・ω・´)♪

れんげ荘という小説をご存知だろうか。ときに早期リタイアのバイブルとも評される、日常生活を描いた小説だ。以前に「今度読もうと思っていた小説のタイトルが思い出せないから、誰か教えて。。」という記事を書いてから、少し時間が経ってしまったけど、やっとレビュー記事を書くよ。今日はそんなお話(`・ω・´)!

「れんげ荘」とは。

概要

主人公はキョウコという45歳の未婚女性。元々は有名な広告代理店で働いていたキャリアウーマン。しかし彼女は、忙しく、また偽りや欲にまみれた日々が嫌になり、その身分を捨てて、都内の古いアパート『れんげ荘(家賃3万円)』にて、月10万円による生活をスタートさせる。れんげ荘という小説は、そんな彼女のゆったりとした日常を描いた小説で、2009年4月に出版された。

補足だけど、2013年8月に、キョウコの3年後の生活を描いた『れんげ荘物語 働かないの』という続編が発売された。こちらは後日、改めて紹介するね。

言ってみれば、34歳無職さんの小説版のようなイメージ。いや、発売時期でいえば、『れんげ荘』の漫画版が34歳無職さんというべきか。

いずれにしても、早期退職や隠居生活に興味がある人は、発見の多い小説だと思う。なんというか、状況や心情の描写が、繊細かつリアル。実体験?と思ってしまうくらい小説臭さがなく、キョウコ目線で丁寧に綴られている

僕は堅苦しい小説は苦手なんだけど、そんな僕でもさらっと読める柔らかい文章。発売から時間が経っていることもあり、この記事を書いている時点では、れんげ荘も、れんげ荘の続編も、Amazonにて1円で売られているので、チャンス!

登場人物。

クマガイさん

れんげ荘の住人で、60歳代のおしゃれな女性。主人公のキョウコに適切な助言をくれる存在。おせっかいすぎず、絶妙な距離感でキョウコと接する。キョウコにとって、日常的に会話をかわす、身近な存在。昔はお酒やタバコに溺れ、遊びまわっていたという意外な過去もある。

コナツさん

20歳代後半(?)で、職業は「旅人」。外国人が大好きな変わり者の女性。れんげ荘は通常、家賃3万円だが、倉庫に住んでいるため、家賃は8千円。

キョウコの母

キョウコの天敵で、とにかく世間体を気にする。自分本位な性格。家事などは完璧にこなす。キョウコの父親が亡くなったときの母親のちょっとしたふるまいや言動が、キョウコの生き方に大きな影響を与えることになったのだが、本人は気付いていない。

マユ

キョウコの古くからの友人。キョウコと同い年の45歳。高校時代は生徒会の副会長をしていたしっかりもの。高校の教師をしている。既婚で高校生のこどもを持つ母。キョウコの愚痴を聞きつつ、置かれた状況も生活スタイルも違う立場から、第三者の目線でアドバイスをくれる存在。

ケイ、レイナ

キョウコの兄の子ども。レイナは11歳、ケイはレイナの5歳年上(16歳?)。物語中では、レイナがよく登場し、キョウコによく懐いている。

ここから下は、ネタばれを多く含むよ。その辺を了承いただいた上で読み進めてね(`・ω・´)

 

 

キョウコが月10万円生活をはじめたきっかけ。

父親の死と、そのときの母親の言動が、キョウコの心中を揺さぶる(P.11)。

「お父さんは、ばかよ。どうしてそんなに働かなくちゃならかったの」
 と大泣きした。何の楽しみも知らず、ただ家族のために働きづめに働き、ローン完済とほぼ同時になくなった、生真面目な父がかわいそうでならなかった。そして母の言葉に心の底から腹が立った。
(何から何までお父さんのせいにして。あんたが家とかお金とかって、うるさくいわなければ、お父さんはあんなに働かなくて済んだじゃないの)
 父の死によって、キョウコのなかの何かが消えた。

文字に書くと、キョウコの母はひどい人だと感じるかもしれないけど、彼女は彼女で、悪気があるわけじゃないんだよね。大泣きしてるのだって、悲劇のヒロインを演じている部分がまったくないかはわからないけど、すべてが演技ではないはずだ。また、もしキョウコの父が、若くして亡くなるようなことがなければ、ここまでキョウコの怒りを買うこともなかったかもしれない。

それに、こういうタイプの人は、そんなに少なくないよね。男女平等が叫ばれるご時勢だけど、どこかで「男は稼いでこい」「女は家を支えろ」みたいな雰囲気はある。キョウコの母は、これを少し極端にしただけで、その分、家事は完璧だし、習い事などにも積極的に通い、女性らしさ(?)を磨いている。

しかし以前から、過度に世間体を気にする母の考え方に、違和感を抱いていたキョウコ。父の死を経験し、その後の母の言動に怒りを覚え、それをきっかけに価値観が大きく変わっていくことになる。

 

その後、日々の生活で消耗する中で、キョウコはあるテレビ番組を見たことがきっかけで、月10万円での生活を思い描くようになる(P.12)。

そんなとき、キョウコはあるテレビ番組を見た。ニューヨーク在住のアメリカ人女性で、彼女は連日連夜、パーティで明け暮れるような華やかな仕事に嫌気がさし、あるときすっぱりと会社をやめてしまった。月十万円で三十数年間、暮らせるだけの貯金を持って。キョウコの意志は決まった。それまではブランドから新作のバッグが出ると、ついつい心が揺らいだりしたが、将来の展望が見えてくると、そんなものには目を奪われなくなった。ただひたすら、貯金あるのみだった。

キョウコはサラリーマン時代は、大手の広告代理店で働いていたので、それなりの高級取りだった。しかし立場上、ファッション関係に力を入れる必要があり、かなりの額を投じていたようだ。

しかしあるテレビ番組を見たことで、将来仕事を辞める決意をする。僕の場合はBライフに衝撃を受けたことがきっかけだったけど、キョウコの場合は、テレビ番組だったんだね。同じ情報であっても、自分の置かれた状況や思考次第で、反応は大きく異なる。しかるべきときに、しかるべき情報を手に入れたとき、それはすっと心身に入ってくるんだよね(`・ω・´)!

 

親子関係の決裂。

その後、キョウコは実家を出て、念願のリタイア生活をスタートさせる。しかし母親には、会社を辞めたことも、れんげ荘という古いアパートに住むということも、伝えていなかった。ある日、それらの事実が母に露呈し、キョウコの住む「れんげ荘」を訪ねてきたことで、母親から敵意を向けられることになる(P.67)。

「あんたが恥ずかしいことをすると、お母さんの恥になるのよ。近所の人にあんたがこんなところに住んでいるってわかったら、もう、みっともなくてあそこには住めないわ」
(中略)
「大学まで出して、名前の通った広告代理店に勤めて、どうしてこんなことになるのよ。これってお母さんに対する嫌がらせじゃないの」
(中略)
「だいたいね、人は住む場所に影響されるのよ。こんなところに住んでる人間なんて、ろくなもんじゃないわ」

まぁ、キョウコの母の言いたいことがわからないわけじゃないんだけどね。順風満帆で、良いところの奥様として生きてきた人にとって、自分の娘がそういう生活をしているのは、恥ずかしくて仕方がないのかもしれない。でも、誰かに迷惑をかけてるわけじゃないのに、どうこう言ってくるのは、ただのエゴでしかないよね。娘の生活を心配しているのならともかく、自分のことしか言ってないし。

キョウコの母は、近所の人には、キョウコは「長期出張中」だと説明している。キョウコも、律儀に、母の設定に合わせてあげている。こんな設定も、妙にリアルだよね(´・ω・`)笑

 

クマガイさんの信条。

クマガイさんは前向きで、人生を達観しているような描写が多く、そんなクマガイさんに、キョウコは信頼を寄せていく。その中で、クマガイさんが「れんげ荘」に住む理由と信条を語るシーンがある(P.102)。

「あたし、掃除も好きじゃないし、トイレやお風呂を掃除しなくて済むっていうのが気楽なの。不動産やのおじさんも娘さんもいい人だし」
「でも地震が来たら、一発で潰れるっていう感じがしませんか」
「まっさきにぺしゃんこになっちゃうかもしれないね。でもそのときにあの部屋にいないかもしれないし、いくら食料を蓄えたシェルターとか、立派な耐震設備や避難場所を家に造ったって、そのときに家にいなければ何の意味もないもん。こればっかりは運としかいいようがないわよ。物事は心配しはじめたらきりがない。これが私の信条」
 クマガイさんはきっぱりといい切った。若い頃は不良だったかもしれないが、今のその達観ぶりが気持ちよかった。

『物事は心配しはじめたらきりがない』。これは本当にそのとおりだよなぁと思う。どこかで割り切らないと、心配しているだけで、人生が終わってしまう。心配事なんて山ほどある。些細な心配事だって、完全に対策しておこうと思うと、ものすごい労力がかかる。これって、仕事でもそうでしょ(´・ω・`)?

何でも、長所短所は表裏一体。何かを得ようとすれば、何かを失う。これは当たり前のことなんだよね。クマガイさんは、この小説で頻繁に出てくるけれど、悲壮感の欠片もなくて、素敵な人物だなぁと感じるよ。こんなおばあちゃんが近くにいてくれたら、ものすごく心強いなぁ。

 

旧友からのアドバイス。

ある日、キョウコは、旧友のマユを家に来ないかと誘った。マユは、れんげ荘を「キョウコの禁断の園」だと解釈したが、そうではないとわかり、遊びに行く運びとなった。れんげ荘にて、今の生活に悩むキョウコとマユとの会話がこちら(P.119)。

「みんな、どういう状況にいても、これでいいのかなって思うんじゃない。勤めているときだって、そう思ってたんでしょ。私だってそう思うことはあるわよ」
「それはそうだけど、私はそこから一歩踏み出したつもりだったの。でもあまり変わってないような……」
(中略)
「あなたは、体がだらだらしているつもりでも、全然、気持ちがだらだらしてないのよ。どこかで、これじゃいけないって考えてるんでしょ。だからまじめなのよ。一歩踏み出したつもりでも、変わらないっていうのは、勤めているときと頭が変わらないからよ。頭も切り換えなくちゃ。望んだとおりに気楽に無職でいればいいじゃないの」
(中略)
「考えてみたら、私、趣味とか、自分をリフレッシュする術を知らなかったのね。会社と家の往復だけで。ああ本当に仕事一辺倒のおやじっ」
「しょうがないじゃない。過去は戻ってこないんだから。これから先のことを考えれば。考えたくなければ、考えなくていいのよ。」
「そうかな」
「私はそう思うよ。無理をするからひずみが起こる」

キョウコの旧友であるマユも、クマガイさんと同様、非常に魅力的な人物だ。登場回数は、やや少なめだけど、毎回、奥行きのある言葉を残していく。マユも決して、楽しいことばかりの日々を送っているわけじゃない。でもだからこそ、こうやって客観的に物事をみることができるんだろうね。また一方でれんげ荘を「キョウコの禁断の園」かもしれないと推測し、キョウコが言い出すまでは、決して行こうとしない気遣い。さすが教師。

クマガイさんにしても、マユにしても、本当に人間的な魅力にあふれた登場人物が多いのが、この小説の特徴だ。またキョウコ自身も、そういった人物を惹きつける何かを持ってるんだろうね~。マユの発言から、キョウコのキャラクターが、より深く見えてくるのもおもしろい。

 

 

なぜれんげ荘を選んだか。

家賃3万円とはいえ、部屋にお風呂やトイレがないのは、僕個人的な意見では、それほど優れた物件だと感じない。探せばもっと、良い物件があったのではないか。この点だけは、読んでいて疑問だったんだけど、回答が書かれていた(P.165)。

 目星を付けた地区で、家賃で選んだら、ここくらいしかなく、木や草に覆われたこのアパートが気に入ってしまった。住む地域を変えたら、同じ家賃でもう少し快適な部屋があったかもしれないし、ここより狭いけれども築年数が新しい部屋もあったかもしれない。都心から離れたサラリーマン家庭が多く住むベッドタウンのほうが住みやすかったかもしれない。しかしそういう街に住んだら、絶対に自分は浮いてしまう。そういう街は、
「何をしているのかわけがわからない人」
 を許してくれない。はっきりした何かを持たない人間には住みづらいのだ。しかしここは、わけがわからない人を許してくれるような大らかさを感じた。

なるほど。たしかに地域の色によっては、「何をしているのかわからない人」を許してくれないところってありそうだ。そういう意味では、都会のど真ん中は、懐が深い…というか、いろいろなものがごっちゃになっているから、何でも許容されやすい。

思えば、僕がこどもの頃に住んでいたところは、近所同士のつながりが強かった。子どもを持つ親や、子どもにとっては住みやすい街だと思うけど、キョウコのような暮らしはしづらい場所になるよね。逆に今僕が住んでいる場所は、そういった生活も可能だと思われる。近所付き合いはほとんどなく、そもそも人の入れ替わりが激しくて、どういう人が住んでいるか、僕自身が正確には把握していないくらいだ。

 

子どもからみたれんげ荘。

あるとき、姪のレイナがれんげ荘に遊びにくることになった。キョウコの母(レイナの祖母)は反対したようだが、レイナは結局、れんげ荘にやってきた。そのときの会話(P.245)。

 レイナは壁に寄りかかって、畳の上に足を投げ出した。
「なんだかいいね、ここ」
「そう」
「息ができる感じがする。体が楽っていうか」
「家だって居心地がいいでしょう」
「そうだと思ってたけど、ずいぶん違う感じがする。とにかく息をしているっていう感じがするの。おばあちゃん、どうしてここを嫌がるのかな」
「汚いっていってたわ」
「そんなことないよ。ちゃんと掃除されてるもの」
(中略)
「私、ここ好きだよ。うまくいえないけど、住んでるっていう感じがする」
 キョウコは胸のつかえが下りたような気がした。年齢など関係なく、自分を理解してくれる人が増えたようでうれしい。

子どもは素直だし、敏感だよね。本当に大事なものは何かを見ようとするし、自然と見ている気がする。いつから人は、持っているものや、住んでいる場所、勤めている会社などで人を見るようになるんだろう。小さい頃でも、新作のゲームやおもちゃを持っている人をうらやむことはあった。だけど、その感情とも、何か違うよね。

でも仕方がないことなんだろう。子どもの頃から、テストの点数で叱咤されて、良い学校にいけば褒められる。大きな会社に入社することこそが、大学4年間の命題だという人だっている。こんな環境で育てば、そういう価値観が出てきてしまうのは当然といえば、当然なのかもしれないね。

 

少しでもリタイア生活に興味がある人にとっては、気付きの多い小説であるのは間違いない。断言できる。ぜひ読んでみてほしい。

続編はこちら。レビュー記事は改めて書くつもりだけど、こちらも負けず劣らず面白い。でもあくまで続編なので、順番に読んだほうが楽しめると思う。

しつこいけど、34歳無職さんもすばらしい作品。2015年12月現在、まだ6巻までしか出ていないので、今ならまだ追いつける(`・ω・´)!

 

以上、ゆとり隊長でした(`・ω・´)!

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